職場におけるカサンドラ症候群
かつては夫婦における共感性にのみ言われてきたカサンドラ症候群も、対人関係全般で扱われるようになりました。
職場で自分の意見が通らない、正当な評価をしてもらえないとなると、心理的苦痛は相当なものです。どんなにやりがいのある仕事だとしても、人間関係がうまくいかなければ続けられませんし、適応障害と診断されて休職せざる得ない状況になる方もいるでしょう。
職場では発達障害をカミングアウトしている方は圧倒的に少ないと思いますが、個々の頭の中で「あの人…発達障害じゃない?」とつぶやき、余計にストレスを感じます。
曖昧な指示と柔軟性に欠ける対応、感情の起伏の激しい上司にメンタルをやられてしまう。
想定外のコミュニケーションスタイル、連携が困難で、こだわりの強い部下に振り回されてしまう。
家に帰っても疲れ果ててしまい、QOLは下がる一方ですが、怒りのぶつける場所がなく一人嘆くしかありません。
ただ大人の場合、単純に発達障害と決めてしまうのはあまりよくありません。職場ではそれぞれの立場で抱えるストレスがあり、対人関係に影響しています。そのストレスが長期に渡れば、精神的な疾患が進行している場合もあるからです。
いわゆるパワハラやモラハラなどは、パーソナリティ障害の域ではないかと思われます。
特徴としては、他者との共感性が乏しく、自分の立場に執着が激しい。相手を感情で揺さぶり自分への批判には極めて敏感。これらは発達障害の特性とは別です。
いずれにせよ、巻き込まれてしまったカサンドラ症候群の方(以下カサンドラさん)は、どこから手を付ければいいのかわからないことでしょう。おそらく、カサンドラさんは職場だけではなく、ほかの対人関係でも同じ立ち位置に置かれやすく、逃げる方法を学んでいない事が多いです。
単純に「強くなればいい」という話ではありません。モラハラ上司を黙らせるなら、彼らより上のキャリアになるのが手っ取り早いですが、上司より上のポジションになるまでには時間もかかります。
カサンドラさんに必要な強さは、「誰かに頼る事」ではないでしょうか。
もちろん自分自身の弱さと向き合うことも、コミュニケーションスキルを上げることも、感情のコントロールも、個人的なカウンセリングも必要です。
ですが、職場での協力も仰がなければ、事態は好転しません。カサンドラさんの弱みの一つは「一人で頑張っちゃう」「自己犠牲的な行動」です。会社のコンプラ部門に申告する、職場の同僚と情報共有(悪口の言い合いとかはダメよ)、時には自分自身のキャリアチェンジを決断する覚悟にも備えておかないといけないでしょう。色々な課題に取り組むときには、誰かに伴走してもらうのが一番です。
一人一人の互いの違いを尊重するとは、自分もその中の一人だということを忘れないようにしましょう。