広末涼子さんの告白から考える「双極性感情障害」と感情との向き合い方

最近、女優の広末涼子さんが「双極性感情障害」を公表し、多くの人に衝撃を与えました。幅広い世代から愛されてきた彼女の告白は、この障害についての理解を深める大切な機会になるのではないでしょうか。
躁うつ病?双極性障害?となかなか当事者にならなければわからない区別ですが、ざっと解説するとこのような違いと変遷があります。
精神医学の領域では、症状の理解が深まるにつれて疾患の名称や定義も変化してきました。かつて「躁うつ病」と呼ばれていた状態は、現在「双極性障害」や「双極性感情障害」と呼ばれています。この名称の変更には重要な意味があります。
日本の精神医学では長く「躁うつ病」という呼称が使われてきましたが、国際的には1980年代から「双極性障害(Bipolar Disorder)」という名称が主流になりました。「双極性感情障害」とは双極性障害の中でも「感情(気分)の波」に焦点を当てた名称であり、より症状の本質を表現しているとも言えるでしょう。
私は医師ではないので医学的な解説は深く追いません。感情を扱う身としては、「そんなことを言ったら全部『感情障害』ではないのか?それは障害と言えるのか?」とふと思ったのです。
精神医学で「障害」と呼ばれる多くの状態は、結局のところ「感情の調節困難」という形で表面化します。持続的な抑うつ感情(うつ病)、過剰な不安感情(不安障害)、トラウマ記憶に関連した恐怖感情(PTSD)など、すべては、多くの精神疾患は「感情障害」と見ることができるのではないでしょうか。
セッションをしていて思うのは
感情は私たちの内面世界と外界をつなぐ窓であり、
感情を知る事は副作用のない絶大な効力を持つ治療薬であること。
症状の細分化によって感情の起伏そのものを「障害」や「病気」とみなし、とりあえず薬で抑えておけばいい、とか病気ならおとなしくしておけ、といった風潮が強くなる事を私は心配しています。そもそも感情が動くことは人間の正常な機能であり、喜び、悲しみ、怒り、恐れなどの感情は私たちの生存と幸福に不可欠なのです。
だってそうでしょう?
人からひどい言われ方をされて傷ついた。・・・むしろ正常な反応ですよね。
健康な感情生活とは、感情が動かないことではなく、様々な感情を適切に認識し、表現し、処理できる状態ではないでしょうか。
当然、傷ついた状態が長引けば、心身にマイナスの影響があるのは間違いありません。対処は早ければ早いほどいいですし、その方法は共通して一つではなく、「一人に一つ」なのです。
広末涼子さんは若い頃から度々週刊誌などで取り上げられ、その行動が「芸能人らしい」「スクープのネタ」として消費されてきました。今思えば、当時の彼女の言動の一部は双極性感情障害の症状だったのかもしれません。彼女もまた、「自分はこういう人間なんだ」と他者評価から作り上げた自分像を受け入れるしかなかったのではないか。彼女の感情は長いあいだ適切に取り上げらずに翻弄されてきたのでは。そう思うと心が痛みます。
私たちの社会では、「感情を抑える」「冷静でいる」ことが美徳とされることがあります。しかし、これらは経験の上に構築されるものであり、いきなり感情を抑圧するのを学んでしまうと健康的な感情処理ができなくなります。
今一度、自身の感情処理能力を見直してみましょう。抑圧が多すぎる方はご相談ください。
(※このブログは医学的なアドバイスではなく、心理カウンセリングの観点からの考察です。医療機関での診断も併せてご自分の向き合い方に取り入れていただければと思います。)